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給与明細の作成方法とは?記載項目や発行時の注意点を解説

給与計算業務を効率化する方法をわかりやすく解説

給与明細(支払明細書)の作成・交付は、従業員への給与支払い額やその根拠を示す作業であり、法令遵守の観点からも非常に重要な業務です。しかし、その作業は複雑で時間がかかり専門性が要求されます。

本記事では、給与明細作成の基本、記載項目や発行時の注意点、業務効率化のための最新のクラウド型システムやアウトソーシングの活用方法までを詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

※本記事に記載している法律や制度は、2026年3月時点のものです。最新の公的な情報をご確認ください。

1. 給与明細作成の基本

本章では、給与明細の基本的な定義や役割を分かりやすく解説します。

給与明細とは

給与明細とは、企業が従業員に支給する給与の内訳や控除項目を詳細に記載した書類です。具体的には、基本給、各種手当、残業代などは支給項目、社会保険料、所得税、住民税などは控除項目に記載します。

給与明細の交付は、所得税法第231条により、国内において給与等を支払う全事業者に義務付けられており、また、従業員との信頼関係を築く上でも必要不可欠な書類ですので必ず交付しましょう。

給与明細の役割

給与明細の役割は、日々の勤怠や給与、残業代などを従業員に通知することです。従業員は給与明細を通じて、毎月の勤怠状況や給与額、社会保険料、税金の内訳等を確認し、適切に給与が払われているか確認することができます。

また、収入や在籍状況を示す書類として、個人で行う賃貸契約や各種手続きの際に他の公的書類と併せて提出を求められることもある重要な資料です。

給与明細の記載事項

給与明細には支給額だけでなく、勤怠、社会保険料、税金など、さまざまな項目が記載されています。この章では、給与明細に記載されている主な項目について、それぞれの意味や役割をわかりやすく解説していきます。

勤怠項目

主な勤怠項目は次のとおりです。

出勤日数

対象の月に何日出勤したのか記載します

休日出勤日数

対象の月に何日休日出勤したのかを記載します

労働時間

合計の労働時間を記載します

時間外労働時間

1日8時間、1週40時間を超えた労働時間を記載します

深夜労働時間

22時から翌5時までの労働時間を記載します

支給項目

主な支給項目は次のとおりです。

基本給

職務内容や能力、経験などに応じて支給される基本となる給与

役職手当

一定の役職に就いている従業員に対して支給される手当

住宅手当

従業員の住居にかかる費用負担を補助するために支給される手当

通勤手当

自宅から勤務先までの通勤にかかる交通費

時間外手当

法定労働時間を超えて働いた場合に支給される手当。通常、25%以上の割増率が適用されます

深夜手当

22時から翌5時までの深夜時間帯に労働した場合に支給される手当。通常、25%以上の割増率が適用されます

休日労働手当

法定休日に労働した場合に支給される手当。通常、35%以上の割増率で計算します

控除項目

主な控除項目は次のとおりです。

健康保険料

医療費の自己負担軽減や出産手当金、傷病手当金などの給付に充てられる保険料

介護保険料

40歳以上65歳未満の被保険者(第2号被保険者)が負担し、介護サービスの費用に充てられる保険料

厚生年金保険料

老後の年金や障害年金、遺族年金の給付に充てられる保険料

雇用保険料

失業時の給付や育児休業給付など、雇用の安定を支えるための保険料

所得税

個人の所得に対して課される国税。給与から毎月概算の所得税が源泉徴収されます

住民税

前年の所得に基づいて課される地方税。原則として給与から天引きされます

その他に、2026年4月から「子ども・子育て支援金」が従来の健康保険に上乗せで徴収されます。保険料率は0.23%で、健康保険料と同様に企業と従業員が折半して負担します。

また、年末調整の調整金額も控除項目に記載され、還付の場合はマイナスで表示するのが特徴です。

差引支給額

差引支給額とは、いわゆる「手取り額」のことであり、実際に従業員へ支給される給与額を指します。支給項目の合計額から、控除項目の合計額を差し引いた金額が差引支給額となり、従業員が実際に受け取る最終的な金額です。

計算式

支給項目の合計額-控除項目の合計額=差引支給額

給与明細に記載する社会保険料や税金の計算方法

給与明細の控除項目には、従業員が負担する社会保険料と税金の記載が必要です。この章ではどのように社会保険料や税金を計算するのか解説します。

社会保険料の計算方法

従業員の給与から控除する社会保険料は健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、子ども・子育て支援金です。それぞれの保険料率を掛けて計算します。

社会保険の種類

保険料率

健康保険料

健保組合ごとに異なる。協会けんぽの場合、各都道府県ごとに定められ、毎年見直される

介護保険料

健保組合ごとに異なる。協会けんぽの場合、各都道府県ごとに定められ、毎年見直される

厚生年金保険料

9.15%(会社負担分を含めると18.3%)

雇用保険料

0.5%(2026年度従業員負担分)

子ども・子育て支援金

0.115%(会社負担分を含めると0.23%)

健康保険料、介護保険料は毎年3月に保険料の見直しがされますが、厚生年金保険料の保険料率は18.3%で固定されています。また、雇用保険料率も会社負担分の保険料を含めて毎年4月に見直されます。

出典:『令和8年度保険料額表|都道府県毎の保険料額表』(協会けんぽ)

出典『令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内』(厚生労働省)

所得税の計算方法

所得税とは、従業員の年間所得に基づいて課される国税です。企業が毎月の給与から源泉徴収し、税務署へ納付します。そして、年末調整を通じて正しい税額を確定し、過不足を精算します。所得税の計算の流れは次のとおりです。

1. 給与所得控除の適用

給与所得控除とは、給与所得者に認められているみなし経費です。給与等の収入金額から所定の給与所得控除額を差し引いて、給与所得の金額を求めます。

2. 課税所得金額の算出

給与所得控除後の所得金額から、基礎控除や配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除などの所得控除を差し引き、課税所得金額を算出します。

3. 所得税額の計算

課税所得金額に税率を適用して所得税額を求め、さらに復興特別所得税(所得税額×2.1%)を加算して、税額を算出します。年調年税額といいます。

正しい年税額が算出されたら、毎月の給与や賞与から源泉徴収した所得税の合計額との差額を精算します。源泉徴収額が多ければ還付し、少なければ追加徴収が必要です。

なお、この年末調整による精算は、原則としてその年の最後に支払う給与または賞与で行います。 ただし、還付については翌年1月支給分の給与で行うケースもあります。

一方、追加徴収は、不足額の徴収により手取り給与が著しく減少する場合に限り、税務署長の承認を得たうえで、翌年1月・2月に分割して徴収することができます。

年末調整について、詳しくは「年末調整と扶養控除等異動申告書とは」をあわせてご覧ください。

住民税の計算方法

住民税とは、前年の所得に基づき算出される都道府県民税と市町村民税からなる地方税です。年末調整で最終的な精算が行われる所得税とは異なり、決定された税額を給与から控除します。住民税の計算の流れは次のとおりです。

1. 課税所得の算出

所得税と同様に、前年の給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を求め、さらに基礎控除や配偶者控除、扶養控除などの所得控除を差し引き「課税所得」を算出します。なお、住民税は所得税と控除額が異なる点に注意しましょう。所得税の基礎控除は近年改正が続いていますが、住民税の算出に用いられる基礎控除に変更はありません。

2. 所得割の計算

所得割は、課税所得金額に対して課税されます。税率は原則として一律10%(都道府県民税4%+市町村民税6%)です。

例えば、課税所得金額が1,340,000円の場合、1,340,000円×10%=134,000円が所得割額となります。

3. 均等割の加算

均等割は所得にかかわらず定額で課税されます。東京都の場合、2025年度は5,000円(区市町村民税3,000円、都道府県民税1,000円、森林環境税1,000円)です。

所得割額に均等割を加算して、年間の住民税額を算出します。例えば、134,000円+5,000円=139,000円となります。なお、均等割の金額は自治体により異なる場合があります。

住民税は前年の所得に基づいて課税され、原則6月から翌年5月まで12ヵ月に分けて、給与から徴収します。毎年5月中旬から5月末頃に各自治体から会社宛に「特別徴収税額決定通知書」が届きます。「特別徴収税額決定通知書」には従業員の毎月の住民税の徴収金額が記載されているので、正しく給与明細に反映させましょう。

所得税と住民税について詳しくは、「所得税、「甲欄」「乙欄」「丙欄」の区分、住民税とは?」をあわせてご覧ください。

給与明細の発行方法

給与計算が完了したら給与明細を発行します。給与明細の発行は、所得税法により企業に課せられている義務です。給与計算業務をシステムで行っている場合は、システムから明細を出力しましょう。

紙媒体で発行している場合は、給与担当者が明細を各部署に配りに行くもしくは代表者に取りに来てもらうなどの方法で明細を渡す必要があります。

なお、2007年1月から電子給与明細の発行が可能になりました。業務効率化の観点から、近年では給与明細の電子化が進んでいます。ただし、電子給与明細の発行には従業員の同意が必要です。給与明細を電子で発行する場合は必ず従業員の同意を得ましょう。

給与明細の発行にまつわる注意点

給与明細を発行する際にはいくつか注意点があります。本章では実務上注意が必要なポイントを解説します。

マイナンバーを記載しない

給与明細には、従業員のマイナンバーを記載しないよう注意しましょう。マイナンバーは法律で利用目的が定められており、給与明細は対象ではありません。誤って記載すると、情報漏れのリスクが高まるだけでなく、法令違反につながる可能性もあります。給与明細には必要最小限の個人情報のみを記載しましょう。

残業時間の計算根拠は明確に記載する

残業代などの割増賃金は労働時間に基づいて算出されるため、内訳が不透明だと従業員の不信感やトラブルの原因となります。時間外労働を正確に記載することで、支給内容の透明性が高まり、従業員からの信頼につながります。

標準報酬月額・等級の反映タイミングを理解する

「標準報酬月額」とは健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料の計算を簡素にするため、毎月の給与を一定の区分ごとに当てはめた等級のことです。実際の給与額ではなく、この等級に基づいて保険料や給付額が決まります。

標準報酬月額は年に1回改定されます。この保険料の改定を「定時決定」といい、4月から6月の報酬の平均額を基に、9月から適用されます。なお、昇降給などにより著しく報酬が変動した場合には「随時改定」が行われ、定時決定の時期を待たずに社会保険料が見直されます。

また、変更後の社会保険料の給与明細へ反映するタイミングにも注意しましょう。社会保険料を給与から控除する場合、前月分の社会保険料を控除します。例えば「定時決定」の場合、毎年9月から新しい保険料が適用されますが、改定後の保険料の徴収が開始されるのは翌月の10月です。

給与計算業務の効率化はアウトソーシングが有効

給与計算は複雑で専門性の高い業務です。給与計算業務を自社で対応する場合、担当者の負担が大きくなり属人化しやすくなります。そこで給与計算のアウトソーシングがおすすめです。法改正への対応や計算ミスの防止につながり、業務の品質向上が期待できます。

さらに、担当者のリソースを削減することが可能です。削減したリソースで、採用や人材開発などのその他の人事業務に時間を割くことができ、全体の業務効率化に繋がるでしょう。

まとめ

給与明細とは従業員へ毎月の勤怠状況、給与、社会保険料、税金などを通知する書類であり、給与明細の発行は、所得税法で義務付けられている企業の義務です。給与計算業務から給与明細の発行までのプロセスには時間と専門的な知識が要求されます。

また、割増賃金率や社会保険料率、税金など知識のインプットにはかなりのリソースが必要であり、知識のアップデートが追いつかないこともあるでしょう。

そこで、担当者の負担を軽くする手段として給与計算業務のアウトソーシングがおすすめです。給与計算業務をアウトソーシングすることで、法令遵守を徹底しながらミスを防ぎ、リスクを軽減できます。

給与計算業務をより効率的かつ正確に行い、企業の競争力を高めていきましょう。

長澤 千晴(特定社会保険労務士) 

監修者プロフィール

長澤 千晴(特定社会保険労務士)

HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属

https://jinjiwriter.com/author/Chiharu

大学卒業後、大手旅行会社に入社し、団体旅行営業・添乗業務を担当。その後、出版業界に転身し、編集業務に従事。

その後、管理部門への異動を機に社会保険労務士試験の勉強を開始。2011年、合格。2014年、特定付記。総務・人事の責任者として労務管理、採用、研修、法改正対応、就業規則改正、人事制度・賃金制度変更などを手掛ける。令和8年、社会保険労務士として独立。

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