ADP Research Institute®では、毎年、この分野で全世界で最大規模のアンケート調査を実施しています。本レポートでは、18 か国 34,600 人を超える働き手の期待や要望とニーズに関する回答の一部の紹介とそこから得られた洞察を解説しています。
世界の働き手の 40%で不当な低賃金が常態化しており、その大半(37%)が 1 週間に 6~10 時間無償で働いています。これは 1 か月あたり 3 日分以上に相当します
複数の仕事を掛け持ちしていると答えた人は世界で 25%。その理由として 42%は「十分な生活費を稼ぐため」、31%は「豊かなライフスタイルを手に入れるための資金」、23%は「リタイアのための資金作り」、21%は「借金返済のため」を挙げています。
また、職場でのメンタルヘルスを支えてくれているのはマネージャーではなく同僚だと思う、と答えた割合が高くなっています。18~24 才の 75%がストレスで仕事に支障が出ていると述べており、調査した年齢層の中で最も高い割合となっています。
世界の働き手の約 3 分の 1(28%)が現在の業務の一部を AI に取って代わられると考えており、約 5 分の 1 はこうした最新技術が日々の時間節約につながると考えています。
アジア太平洋地域は、勤勉な働き手が多いことで定評があり、多くが豊かなライフスタイルを送るために 2 つの仕事を掛け持ちしています。
オーストラリア、中国、インド、シンガポール、日本の調査では、その他の国と比べて多くの点で抜きん出ていることが明らかとなりました。例えば、雇用主はメンタルヘルスの支援を何もしていないと答えた割合は同地域でわずか 12%で、その他の地域と比べて非常に低い数値です。同様に「いつも、よく、または時々」賃金が十分に支払われない、とした割合はわずか 38%でした(欧州の平均(50%)をかなり下回っています )。
この地域の企業は、ダイバーシティ エクイティ インクルージョン (DEI)の取り組みに参加する傾向が高くなっています。また、昨今の経済や地政学的な変化にもかかわらず、本調査では、国によって顕著な違いはあるものの、 柔軟な働き方からキャリアアップまで非常に多くのプラス面が明らかとなりました。
レポートをダウンロード良い点として、この地域の働き手は 、日々の仕事でストレスを感じる割合が他の地域と比べて低く 、雇用主が働き手 のメンタルヘルス支援に対応している割合が高くなっています。実際に雇用主がメンタルウェルビーイングを支援することについて 3 分の 2 は「そう思う」としており、この割合は欧州よりもはるかに高くなっています。
昨年、この地域では、賃上げに対して過度な期待がありました。平均昇給率(4.28%)は、期待していた 8.54%を大きく下回っています。また、4 分の 1 を超える働き手が、給与が変わらなかったと回答しました。しかし、今年は昇給を期待する人が昨年よりも減っており、現状に見合った期待をしているようです。
1 週間あたり 8.48 時間の時間外勤務が未払いで、これは欧州(6.31 時間)および北米(7.75 時間)を大幅に上回っています。インドでは 1 週間あたり 10.39 時間余分に働いており、ADPが調査した他のどの国よりも多くなっています。 所定外時間(1 週間あたり 26 時間超)の大半はインディアですが、日本もひけをとりません。
この地域の働き手 は、世界と比べてキャリアアップに重きを置いています。平均すると従業員の 67%がキャリアアップに満足しており、インドでは満足していると答えた割合は 74%にのぼりますが、日本はわずか 32%でした。キャリアアップについて雇用主に話すと答えた人は 3 分の 2 超にのぼります(欧州の 46%を大幅に上回っています)。
この地域の雇用主は、最低 1 つの多様性に関する取り組みにほぼ参加しています。インドと中国では、ほぼすべての働き手 が雇用主がこうした取り組みに関わっていると述べており調査結果を引き上げています。また、同地域は雇用主が多様性と包括性について改善したと考える回答者の割合が最も多く 51%で、世界での平均は 48%でした。
日本の働き手 は、給料、キャリアアップ、勤務時間や勤務場所の柔軟性に対する満足度が最も低くなっています。 研修や能力開発、仕事の楽しさという点で満足する割合も非常に低くなっています。アジア太平洋では自らのスキルに見合った正当な報酬を得ていると考える割合は平均 67%でしたが、日本ではわずか 40%にとどまっています。インドは 74%とほぼ 2 倍の数値です。
日本は世界第 4 位の経済大国であり、貿易大国でもあります。自動車から鉄鋼、半導体まで、多くの分野の製造や輸出元として上位を占めています。その経済は、企業間の大きな結びつきを示す「系列」(連結)企業、終身雇用、年功序列に基づく昇進など、いくつもの特異点 があり、日本独特の資本主義モデル となっています。
当社の調査では、日本の働き手 の不満があらわとなっています。現在の役割に満足しているのはわずか 46%で、どの調査対象国よりも低い割合となっています 。日々の仕事を楽しむことに「満足している」割合も同レベルで、 世界の平均(69%)に後れを取っています。この不満は、給与から柔軟性、メンタルヘルスにおよぶ複数の重要な領域で顕著です。
日本の働き手 の 63%が仕事で最も重要な側面を「給料」と述べているのに対し、昨年は多くの人(46%)が賃上げゼロでした。今後 12 か月で賃上げが見込めるのはわずか 24%で、世界の平均(57%)の半分未満です。 自分のした仕事に対して正当な支払いであると考える割合はわずか 44%で、給料に満足している割合はさらに少なく(39%)なります(地域平均の 67%に後れを取っています)。その一方で、2 つの収入源がある割合は 24%、リタイアに向けて貯金している割合は 42%でこれは日本独特です。
多くの重要分野で、当該地域の他国と比べて日本の満足度は大きく後れを取っています。環境スチュワードシップについては、過去 3 年間で企業が改善したと考える割合はわずか 23%。これはどの調査対象国よりも少ない割合であり、世界平均(52%)の半分未満です。同様に、従業員の貢献意欲を最大限に引き出すための雇用主の取り組みに満足していると述べた割合は 24%にとどまっています。
日本は女性の昇給率(3.19%)が男性(1.75%)を上回る数少ない国の一つです。ただし、賃金未払いの時間外労働の時間は女性(7.73 時間)が男性(5.95 時間)を大きく上回ります。興味深いのは、自分のやった仕事に対して十分な給与が支払われていないと考える割合は男性(44%)よりも女性が少なく(25%)、仕事で認められていると答えた割合は女性(52%)が男性(33%)よりも多くなっています。違いはこれだけにとどまりません。時間の融通や肩書を優先する可能性は、女性の方が男性よりもはるかに高くなっています。
在宅勤務の従業員は毎日出社する従業員よりも満足度が高くなっています。前者は毎日ストレスを感じる割合がわずか 7%であるのに対し、出社する同僚は 18%となっています。驚くことではありませんが、在宅勤務の人は、出社して勤務する人よりも勤務時間の融通と就業場所の両方で満足度がはるかに高くなっています。また在宅勤務者の 49%が自らのスキルに対して正当な報酬を得ていることに「そう思う」としたのに対し、オンサイト勤務者の同様の回答はわずか 37%でした。ただし、在宅勤務者の方が 1 週間あたりの無給の時間外労働が多くなっており(8.1 時間 対 6.45 時間)、雇用保障を受ける割合は低くなっています(24% 対 50%)。