人事部門と財務部門の多くの担当役員が、ビジネスのあらゆる領域で運用コストの削減の課題に直面しています。これは、グローバルな給与計算の分野でも共通です。非効率な業務の進め方は、全体的なコストの増大につながり、さらには長期的な事業の継続性にも悪影響を与えます。海外拠点毎に各国で異なる法規制に従って、限られたリソースで給与計算を自社で行ったり、複数の給与計算業者にアウトソーシングを行うことは、まさに運用コストの増大の大きな原因となっているのです。さらなる海外事業の拡大を目指すのであれば、とりわけその影響は大きなものとなるでしょう。

平均すると、給与は事業支出の 50~60%を占めています2。従業員コストは避けられないものですが、削減する優れた 手段はあります(週 20 時間労働、臨時作業者の雇用、支払い頻度の低減などは、パンデミック後に企業が検討している策のごく一部です)。ただし、グローバルな給与計算については、費用対効果を上げるために採用できる対策が確実に存在します。

コストの算出

給与計算の実行にかかる費用は、会社の規模、給与計算の業務モデル、従業員を雇用している国などの要因に応じて異なります。

現在も社内で給与計算を実施している場合、コストには以下が含まれます。

  • ソフトウェアライセンスの購入
  • ハードウェアやソフトウェアのインストール
  • オンプレミスの給与計算インフラストラクチャを管理し、アップグレードするための継続的リソース

クラウド(サービスとしてのソフトウェア、SaaS)システムを選択している場合、コストには一般に以下の内容が含まれます。

  • 新しい給与計算ソフトウェアを導入するための費用。従業員数、事業を展開する地域、従来の給与計算環境の複雑さなどに応じて、決められた料金を先払いすることになります。また、導入に必要な社内の取り組みについても考慮する必要があります(給与計算、人事、IT、プロジェクト管理チームによる取り組み)
  • 給与計算業者に支払う年間の費用や継続的な費用。 通常は従業員数や契約しているサービスレベルに基づく

数値化できる給与計算コスト

ADP からの委託で Forrester が実施した「ADP Global Payroll の Total Economic Impact™(総経済効果)」調査では、ADP Global Payroll への投資により、次のような主要分野で測定可能なコスト削減を実現できることが明らかになっています。

1. コンプライアンス費用の  削減

労働法は、全世界の各地域で継続的に追加されています。それに伴って、コンプライアンスを確実に遵守し続けるためのコストが増加を続けています(違反に伴う罰金も同様です)。各地域には、独自の税金、保険、年金の要件、行政手続き、銀行取引の手順が存在します。法律の更新による微妙な指示を追跡、分析するための従業員を今でも雇用している場合は、関連コストが急騰するなか、記録を最新に保ち、給与計算と人事システムの準拠を徹底させなければなりません。

コンプライアンスのモニタリングをグローバルな給与計算プロバイダーにアウトソーシングすることで、社内の法務関連の人員数と、何よりもコンプライアンス違反のペナルティを回避できるという観点から、大幅にコストを節約できます。

2. 直接コストの 削減

従来の給与計算システムを廃止し、グローバルな給与計算ソリューションに移行すると、従来のソリューションに要したライセンス費用とメンテナンスコストを支払う必要がなくなると Forrester は指摘しています。

グローバル給与計算プラットフォームへの移行により削減できる その他の直接コストには、チームが従業員データを手動で入力したり、従業員の問い合わせに回答したりするのにかかる時間があります(ADP が実施した「給与計算業務のトレンド:グローバル企業向け給与計算調査 2021」によると、回答者の 61%が、給与計算のスタッフへの問い合わせ数が対応しきれないほど多いと報告しています)。また、給与明細の印刷コストや、従業員の口座への給料の入金にかかる銀行の送金コストも回避できます。

3. 給与計算のミスの削減

支払い額不足、支払いの遅延といった従業員への給与支払いミスはスタッフの士気に大きな影響を与え、従業員が請求書の支払い期限を守れなくなったり、新しい就職先を探す可能性が高くなったりします。

気がかりなのは、会社がこのような問題に取り組もうとしている様子がないことです。ADP Research Institute が実施した「働く人びと 2024:世界の労働力の状況」調査では、「常に支払い額が少ない、または支払い額が少ないことがよくある」あるいは「常に支払いが遅れる、または支払いが遅れることがよくある」と回答した従業員の数は 2021 年より増加しています。3

採用活動やオンボーディングを考慮すると、従業員の離職は相当なコストになりえます。従業員の定着率の改善がわずかであっても、採用と新入社員のトレーニングにかかるコストの削減という面では大きな効果があります。統合されたグローバルな給与計算システムを導入することで、従業員の賃金に関するエラーがなくなり、誤りを修正する時間を節約し、従業員の離職率を大幅に低減できます。

4. 給与計算プロセスでの効率を向上

給与計算システムと人事管理プラットフォームを統合していない場合や、接続していない複数の給与計算システムとサービスを各国で使用している場合は、複数のソースからデータを取得、検証する必要があるため、スタッフが時間を無駄にしている可能性があります。負担の高いプロセスの処理、手動でのデータ入力、重複した作業にチームが時間を費やしているため、給与計算業務には必要以上にコストがかかっています。

前回の給与サイクルでのエラー修正で、どのくらいの時間が無駄になったのかを考えてみてください。グローバルな給与計算プラットフォームは、給与計算タスクの自動化と、価値を創出する活動への従業員の再配置の両面で、財務的な利益をもたらします。

5. 給与計算の報告に関する効率

統合された給与計算モデルを使用していない企業の多くが、統一性のある正確な給与計算情報を追跡しようとして時間を無駄にしています。こうした情報は、「賃金支払い額が最も高い国はどこか」といった、ワークフォースに関する基本的な疑問への回答に必要です。解決策は、信頼できるグローバルな給与計算データに簡単にアクセスできるよう、お客様のレポート作成と分析を統合することです。その結果、支出が明確になり、効率の大幅な向上に役立つだけでなく、レポート作成に必要な時間を節約した分、 スタッフの時間をより戦略的な目的に割り当てることができます。(加えてそのようなデータをリアルタイムで利用できるので、アジリティが向上し、最新かつ高品質の情報を基に、速やかな意志決定ができるようになります。)

調査対象の 97%が、給与計算の情報はコスト管理戦略上の重大な懸念事項であると考えており、97%の対象者が、給与計算の情報を営業と成長戦略に欠かせないと考えています。4 

隠れたコスト:数値化が難しいが、軽視できない

隠れたコストは把握が困難ですが、影響がないわけではありません。実際に、給与計算の処理に伴う「隠れた」コストはたいてい、把握できるコストを超過しています。

隠れたコストを分析し、削減することで高められる生産性を、企業は十分活用できていない傾向があります。その理由は、給与計算のプロセスには通常、人事、財務、IT などの部署や、以下のような業務が関係しているためです。

  • 給与計算のプロフェッショナルのオンボーディング、トレーニング、引き継ぎ
  • システムのメンテナンス、信頼性、インターフェイスのコスト(人事やその他のビジネスソフトウェアとの API 統合の作成)
  • 給与計算用の従業員情報の手動収集や、給与計算に必要な前段階で作成された計算データの手動インポート
  • 通貨の変動と換算のコスト。

最後に、給与計算の速やかな統合に必要な柔軟性がない状態で新規市場へ進出した場合に、その機会に対して必要になるコストを考えてみてください。このコストは把握が難しいのですが、海外進出の準備をする際には考慮が必要です。

コスト効率のよい給与計算のためのシンプルなソリューション

給与計算のプロセスのアウトソーシングは、給与計算のコスト削減に大幅な影響を与えることができる手段です。多くの会社にとって、給与計算は中核的な事業でも利益を創出する活動でもありません。そのため、専門知識や関連インフラストラクチャを備えている給与計算のプロフェッショナルに業務を委託するのは理にかなっています。

アウトソーシングにより、給与計算管理のコストが固定のコストから、従業員数や会社の所在地を考慮した変動コストへと変わります。新しい地域で雇用するスタッフが増えても、成長に合わせて拡張できるグローバルな給与計算プラットフォームが導入されているため、人事や人材獲得の人員を追加するために費用を使う必要がありません。

アウトソーシングに対して社内から反対がある(おそらくは地域や国内の人事や財務リーダーから)場合は、経営陣に対して、会社が新しい国や地域に進出する際に給与計算のアウトソーシングを試用するよう推奨してください。そうすることで、実際の利点を確認し、報告できるので、将来的に企業全体でのコミットメントを確保するのが非常に簡単になります。

このような情報を検討すれば、主な疑問は、「給与計算にはどのくらいのコストがかかるのか」ではなく、「給与計算によりどのくらいのコストを節約できるのか」になるでしょう。給与計算のコスト効率のトピックに関する詳細については、「Debunking the myth that global payroll is too costly for small markets(小規模市場での給与計算はコストがかかりすぎるという誤解を解く)」という ADP のファクトシートをダウンロードしてください。

1. CIO Dive:「The business technology priorities of 2020」(Copyright © Industry Dive(またはそのライセンサー))

2. Deloitte、「Labor spending or overspending?」、2017 年

3. ADP Research Institute、「働く人びと:世界の労働力の状況」、2024 年

4. ADP、「給与計算業務のトレンド:グローバル企業向け給与計算調査」、2024 年