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給与計算アウトソーシング:コスト削減と業務効率化の鍵

給与計算のアウトソーシングでコストを削減する方法

給与計算業務には、給与や賞与、手当の計算に加え、社会保険料や所得税・住民税の天引き、年末調整、労働保険の申告など、多岐にわたる業務が含まれます。さらに、年金事務所・健康保険組合・市区町村役所・税務署とのやり取りに加え、勤怠管理との連携、退職時の税務対応、育児・介護休業給付金の申請など、従業員のライフイベントに応じた手続きも発生します。

各国の給与計算制度は、それぞれ異なる規制や税制、社会保険の仕組みに基づいており、日本とフランスは特にその複雑さが際立っています。一方、他の国々でも、異なるカテゴリーの処理が求められるため、一概に単純とは言えません。各国ごとに手続きや計算方法が異なるため、グローバル企業にとっては、それぞれの要件を適切に管理することが大きな課題となります。

ADPの「TCO Analysis 2021」(英語)によると、給与計算のアウトソーシングは、コスト削減と業務の生産性向上に大きく貢献することが明らかになっています。本記事では、給与計算アウトソーシングのメリットやコスト削減の仕組み、成功のポイントについて、わかりやすく解説します。

給与計算にかかるコスト構造と課題

給与計算業務には、TCO(総所有コスト)の観点で、直接コストと隠れたコストの両方が存在します。

まず、直接コスト(見えるコスト)には、給与計算ソフトの導入・維持費、給与担当者の人件費、法定報告の管理費(税金・社会保険料の計算と申告)などが含まれます。一方、隠れたコスト(見えないコスト)としては、頻繁な税制・労働法改正への対応に伴う法改正対応コストや、計算ミスが発生した際の修正コストが発生します。さらに、ERPHCMとの統合によるデータの自動更新、人的資本の可視化を目的とした給与データの管理や分析業務の負担も無視できません。

特に、法改正の影響を受けやすい国では、企業のコストの25.5%以上が「隠れたコスト」として発生しており、適切な管理が必要です。

給与計算アウトソーシングのメリット

給与計算をアウトソーシングすることで、企業は以下のようなメリットを得られます。

  • コスト削減
    ADPの調査によると、給与計算をアウトソーシングすることで、1522%のコスト削減が可能です。

自社運用時のTCO (€)

アウトソーシング後のTCO (€)

削減率 (%)

フランス

606

485

-20%

ドイツ

419

340

-18.8%

オランダ

367

287

-21.8%

英国

323

255

-20.9%

イタリア

564

474

-15.8%

スペイン

321

260

-19%

給与計算アウトソーシングが、システム管理や法令遵守にかかる隠れたコストを削減し、企業の財務負担を軽減します。

  • 業務効率
    給与計算アウトソーシングにより、管理業務の削減、人的ミスの低減、給与支給の迅速化など、業務の効率が大幅に向上します。具体的には、給与計算や休暇管理における手作業を削減することで、管理業務の負担を軽減できます。また、習熟度の高い外部の専門チームが担当するため、給与計算の精度が向上し、人的ミスも大幅に削減されます。さらに、多くのアウトソーシング業者が自動化された業務プロセスを導入しているため、期日通りの給与支給が確実に行われ、確実かつ迅速な処理が可能になります。

    調査では、給与計算をアウトソーシングした企業は、生産性が55%向上することが確認されています。

  • コンプライアンス強
    給与計算は、税務や社会保険の法律変更に常に対応しなければなりません。アウトソーシングを活用すれば、専門部隊による最新の法改正対応が可能になり、企業のコンプライアンスリスクを軽減できます。

  • スケーラビリティ(柔軟性)
    企業の成長に伴い従業員数は増加し、給与計算の業務量も当然、増加していきます。アウトソーシングを活用すれば、給与計算のスキルと経験のある人材が不足している中で、人材の募集や、トレーニングにコストをかけずにより迅速な事業拡大が可能になります。また、従業員数や事業規模の変化に応じて、必要なサービスを柔軟に調整できるため、拡大や縮小、分社化、企業買収による統合などにも対応しやすくなります。

アウトソーシング導入のポイント

給与計算のアウトソーシングを成功させるためには、以下のステップが重要です。

  • 自社のニーズの明確化
    自社の現状を精査した上で、ニーズを明確にすることが重要です。その結果、どの業務をアウトソーシングし、どのレベルまで外部委託するのが適切かを判断する必要があります。企業によっては、給与計算の一部のみをアウトソーシングし、コア業務は社内で管理するハイブリッド型の導入が適している場合もあります

  • 適切なアウトソーシングパートナーの選定
    適切なアウトソーシングパートナーを選定する際は、企業のビジョンや業務プロセスを理解できるか、カスタマイズされたサービスを提供できるか、法改正やコンプライアンス対応に強いかといった点を慎重に見極める必要があります。給与計算は企業の財務や従業員満足度に直接影響を与えるため、信頼できるパートナーの選定が不可欠です。

  • スムーズな移行プロセスの確立
    スムーズな移行プロセスを確立するためには、現行の給与計算システムと新システムの統合を計画し、適切な準備を行うことが重要です。また、従業員への影響を最小限に抑えるため、システム導入に伴うトレーニングを実施し、円滑な移行を支援する必要があります。導入時には、データの移行を慎重に進めるとともに、従業員が新しいシステムに適応しやすい環境を整えることが求められます。

今後の展望:給与計算アウトソーシングの進化

給与計算のアウトソーシングは、デジタル化やAIの進化によって、今後さらに高度化していくと考えられます。特に、クラウド型給与計算システムの普及により、どこからでもアクセス可能な環境が整い、より柔軟な運用が可能になります。また、AIと自動化の活用が進むことで、給与計算のミスのチェックが容易になり、e-Gov対応を含む社会保険や税務処理の自動化が促進され、業務の正確性と効率性が向上するでしょう。さらに、データ分析の高度化により、給与データを活用した人的資本の可視化が進み、人事戦略の強化が期待されます。将来的には、給与計算のアウトソーシングは単なるコスト削減手段ではなく、企業の戦略的な人事管理の一環として位置づけられるようになるでしょう。

まとめ

給与計算のアウトソーシングは、企業にとって多くの重要なメリットをもたらします。まず、コスト削減の効果が大きく、調査によると1522%のコスト削減が可能であることが明らかになっています。また、業務効率の向上にも寄与し、給与計算業務のアウトソーシングによって生産性が55%向上することが確認されています。さらに、法改正への対応や適切な手続きの実施を通じてコンプライアンス対応が強化され、リスクの軽減につながります。加えて、専門部隊による正確な処理と自動化の活用により、給与支払いの迅速化が実現し、人的ミスの発生も大幅に低減されます。

企業がグローバル化し、業務の複雑性が増す中で、給与計算のアウトソーシングは、より柔軟で効率的な経営を実現する鍵となるでしょう。適切なパートナーを選定し、スムーズに移行することで、企業の成長を支える強力な基盤を構築できます。

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