グローバルな給与計算を的確に行うことは非常に重要です。不正確な支払いや支払いの遅延は、従業員の意欲の低下、罰金、企業としての評判の低下につながりかねません。それにもかかわらず、グローバルな給与計算のリーダーを対象とした調査では、実に 75%の企業が給与計算を効果的に管理できていないと回答しています。1

では、グローバルな給与計算がこれほどまでに困難なのはなぜでしょうか。この質問にひとことで答えることはできませんが、以下のような要因が考えられます。

  • オフィスの所在国
  • 企業の成長状況(古いシステムの継続的な利用が大きな問題になる可能性がある)
  • 適切な専門知識を利用できるかどうか
  • 使用している給与計算システムの数(複数のシステムがどの程度適切に連携されているか)
  • 全世界での新たな法律の制定

グローバル給与計算において最も差し迫った問題の一つに、給与計算の担当者の業務を困難にさせている金融取引に関する法律の激増があります。コンプライアンス遵守を求める法令アラートの年間総数は、世界全体で 2008 年にわずか 8,704 件だったものが、2018 年に 57,364 件に増加しています2

当然のことながら、多くの企業が複数の国で利用できる給与計算処理ソリューションを必要としています。こちらのグローバル給与計算の管理ガイドに記載した活用可能な選択肢について詳細をご確認ください。

グローバル給与計算の管理ガイド

グローバルな給与計算ベンダーを利用する

グローバルな給与計算を 1 社のベンダーにアウトソーシングすると、従業員は一貫性のあるシンプルなユーザーエクスペリエンスを得ることができます。また、コンプライアンスに準拠した給与計算と統合レポートのための信頼できるデータが提供されるようになります。クラウドベースのテクノロジーを利用することで、世界中のどこからでも給与計算業務を行うことができるようになります。このようなテクノロジーは、新たな地域への進出を目指すビジネスに最適です。ベンダーのテクノロジーには、新しい法律の導入に対応するための自動更新が組み込まれている必要があります。また、当該地域の専門知識を提供し、変更が企業と従業員に与える影響について説明する必要があります。

現地で処理される給与計算

現地のマネージャーは、国内の給与計算サービスプロバイダーを利用することによって、管理している実感を持ちたいと希望することがよくあります。この欠点は、事業展開している地域や国ごとに異なるプロバイダーが必要になることです。これにより一貫したユーザーエクスペリエンスが得られず、グローバルなレポートやデータ分析の提供が困難になる可能性があります。

給与計算の集約システム

このモデルでは、1 社のプロバイダー(または 1 つの集約システム)が、国内の給与計算プロバイダーのネットワークと提携または買収し、現地の業務を担当します。集約システムは、複数の国のデータを連結する責任も担います。このモデルは柔軟性が制限された、高額な選択肢になる可能性があります。また、追加費用を支払わない限り、集約システムのネットワーク内の国内プロバイダーのみに利用が限定されます。

複数の国を対象とした給与計算アウトソーシング(MCPO)

サードパーティーのベンダーが、給与計算ソフトウェアを使用して複数の国の従業員の給与計算を管理します。これは、企業のメインの給与計算システムが対応していない国の、少人数の従業員への支払いのために利用できるソリューションです。

グローバルな給与計算に求められるもの

給与計算チームや人事チームは以下の質問を確認するとよいでしょう。

  • 信頼できる給与計算プロバイダーか?
  • オンライン給与計算ソフトウェアは、必要な人事ソリューションとシームレスに統合できるか?
  • プロバイダーは、事業展開地域のすべての市場や、進出を検討している市場に適した給与計算ソリューションと専門知識を提供できるか?
  • プロバイダーのソリューションはクラウドベースか?(セットアップが簡単、新しいテクノロジーの利用、「どこでも」アクセス可能)
  • プロバイダーのソフトウェアはすべての市場で給与計算をシームレスに管理できるか?
  • 給与計算ソリューションは、現在および将来にわたって必要な機能をすべて備えているか?
  • 現地の法律および規制へのコンプライアンスに対応しているか?
  • 不定期な支払い、パートタイム勤務、柔軟な勤務形態にどの程度対応できるか?
  • 従業員が利用できるセルフサービスのアプリはあるか?
  • 以下の詳細も確認してください。グローバルな給与計算ソフトウェアでは、利用している各種銀行向けに専用ファイルを作成できるか?各国当局が要求する報告や文書の作成に対応しているか?
  • 専門家によるサポートはいつでも受けられるか?

給与計算と人事管理を統合する

給与計算の正確性は必須ですが、給与計算を専門とするプロフェッショナルがやりがいを感じているのはまた別の事柄です。グローバルな給与計算が正しく行われていると確信できれば、その給与計算を使用して以下のようなことができるようになります。

企業の人事管理 (人事管理)または人的資本管理(HCM)ソリューションと組み合わせることで、 従業員データを豊富に入手できるようになり、(従業員) コストの節約や業務の効率化を促進できます。スキルのギャップを回避するための適切なトレーニングの実施や、キャリアパスの明確化による従業員の貢献意欲の向上など、データによりあらゆる取り組みが実現します。また、給与計算データは定期的に確認されるため、給与計算と人事データの統合によって、給与計算データの精度も高まります。

給与計算と人事管理の統合には以下のような効果もあります。

  • 業務の簡素化 - どこからでもアクセスできる一元化されたプラットフォームによって、情報の収集、コンプライアンスの確保、管理業務の削減が簡単になる
  • 組織強化 - リソースを効果的に管理し、従業員のスキル向上、レジリエンスを実現する
  • スケーラビリティ - 従業員関連の業務を拡張(または縮小)し、要件を早期に把握し、人事管理ツールを必要に応じて適時に追加する

グローバルな給与計算のアウトソーシングに関するベストプラクティス

アウトソーシングに関する作業はプロバイダーを見つける前から始まっています。ソリューションの選定には時間をかけるようにしてください。給与支払いは平均で企業の支出の 50~60%を占めるため3、適切なソリューションを選定する必要があります。

給与計算情報にどこからでもアクセスできるようにしましょう。新型コロナウィルスによってオフィスの閉鎖を余儀なくされ、給与計算のプロフェッショナルが必要な従業員情報を取得できなくなったことで、多数の企業が悪影響を受けました。

すべては給与計算から始まるということを忘れないでください。従業員の等級のようなデータでの誤りを回避できれば、会社が戦略的な意志決定を行うために必要なデータを入手できる可能性がさらに高くなります。

自動化はミスの削減に役立ちますが、各システムが効率化され、適切に連携していることを確認する必要があります。最適なソリューションは、標準化されたワークフローと、人事ソフトウェアとのシームレスな統合を備えた単一のシステムであり、勤務時間管理などの人事機能と給与計算の連携が重要です。

データベースが 1 つの単一のシステムでは、機密性の高い従業員情報の安全性が高まり、必要に応じて簡単に削除することもできます。また、法定報告や戦略分析も大幅に簡単になります。

新型コロナウィルス後の柔軟な働き方の体制に適応するテクノロジーが用意されているかどうかを確認しましょう。また、労働規制、税法、事業展開する各国で必要とされるあらゆる内容に関する詳細な知識を利用できるかどうかを確認する必要もあります。

従業員からの問い合わせに対応するリソースはあるかどうかについても確認が必要です。従業員セルフサービス機能が必要かどうかが不明な場合は、人事チームが質問への回答に費やしている時間を記録してみてください。

導入前に、社内の他のメンバーがグローバルな給与計算管理システムに何を求めているかを聞いてみてください。マネージャーはデータのセキュリティとプライバシーについて懸念しているか?従業員は給与支払日に満足しているか?従業員は電子給与明細を希望しているか?意思決定者はどのような情報を希望しているか?対処が必要な男女間賃金格差は存在しているか?給与計算テクノロジーが、現在および将来にわたる全員のニーズに対応していることを確認してください。

最後に、プロセス全体が可能な限り効率的になるようにします。思いがけないミスというのは常に発生するものです。ミスを素早く発見し、修正できるようにしましょう。

グローバルな給与計算プロバイダーとして ADP を選択する

ADP はレジリエンスを実現し、成長に備え、将来のあらゆる事態に対応できるようにサポートします。

ADP は、長年にわたって変化を先導してきました。70 以上前に創業した ADP は、給与計算のために最初の IBM のコンピューターをリースし、最初のクラウドベースの給与計算ソフトウェア、最初のデジタル給与計算、簡単に統合できる新たな人的資本管理(HCM)ソリューションの最初のオンライン市場を開拓した企業です 。ADP は現在、世界 140 か国以上、100 万社以上のクライアントに対して最新の給与計算・人事管理ソフトウェアソリューションを提供しています。

グローバルな給与計算を ADP にアウトソーシングするメリットについて ADP のエキスパートにご相談されたい場合は、お気軽にご連絡ください。

グローバルな給与計算のアウトソーシングのメリット:

  • プロセスの自動化による給与計算ミスの減少
  • 1 つのダッシュボードで労働力を包括的に把握
  • コンプライアンスに関するリスクとコストの低減
  • 人事管理機能との簡単な統合
  • 新しい法規制とその影響に関するアラート
  • 高度なテクノロジーによるセキュリティの強化
  • 最適化されたワークフローによる効率の向上
  • お客様のビジネスの成長に応じたスケーラブルなモデル

出典

  1. ADP、給与計算業務のトレンド:2021 年のグローバルな給与計算についての調査
  2. 「Cost of Compliance(コンプライアンスのコスト)」Thomson Reuters Regulatory Intelligence、2019 年
  3. 2017 年の Deloitte の分析「Labor spending or overspending?(労務上の支出か過剰な支出か?)」