人事テクノロジー市場にはHRM、HCM、HRISなどの専門用語があふれていますが、業界関係者の多くはこれらを混同して使っています。これでは、人事のプロフェッショナルや大規模な人材管理に不慣れなビジネスオーナーの評価プロセスが複雑になりかねません。しかし、こうした用語が何を意味し、それぞれの意味がどう違うのかを理解すれば、これらをうまく使い分け、ビジネスに適したソリューションを選べるようになるでしょう。
HRMとHCMとは何か?
人事という用語からは人員数に限りがあることが示唆されますが、人的資本という用語は継続的な関係の価値を内包しています。解釈の問題は別としても、HRMとHCMのソフトウェアでは一部の機能が重複する一方、大きく異なる点もいくつかあります。
HRMとHCMの類似点
HRMとHCMのソフトウェアは、どちらも従業員を中心としたデータ駆動型のソリューションであり、新しい労働力戦略を確立し、労働力を効果的に配置するのに役立ちます。2つのソフトウエアの類似点は、他に次のようなものがあります。
- 自動化
給与計算や時間管理など、労務負担の大きい仕事を自動化して効率性を向上させる。 - 統合
人事プロセスのコア部分を統合すると、情報の流れを円滑化できることが多い。 - セルフサービス
従業員が自分でタスクを完了できるため、マネージャーの貴重な時間を節約できる。 - 人工知能
チャットボットなどのAIにより、人間が介在しなくても仕事を完了できる。 - データセキュリティ
重層的な保護機能を持つクラウドベースのソリューションが脅威の低減に役立つ。 - コンプライアンスのモニタリング
ローカルとグローバルのモニタリング機能により、規制上の変更を常に把握できる。
HRMとHCMの違いは何か?
HRMソフトウェアは、小規模から中規模のビジネスで人事の中核となるニーズに対応できます。一方で、HCMソリューションは従業員のライフサイクル全体を通じてより幅広い職務をカバーでき、大企業のグローバルコンプライアンスや国際的な給与計算ニーズをサポートするよう設計されています。高度な分析、業界のベンチマークデータ、堅牢なレポートも通常はHCMシステムに含まれています。
自社のビジネスに最適な人事ソリューションを選ぶ
HRMとHCMのどちらにせよ、適切な人事ソリューションを選ぶ際はたいてい、既存の課題と予想されるニーズについて慎重に吟味することが必要です。気が遠くなるような作業に思えるかもしれませんが、次に示す一般的な手順を踏めば、ビジネスオーナーや人事のプロフェッショナルたちは多くの場合で評価プロセスを簡素化できます。
1. 問題の特定
古い人事システムによくある問題として、複雑なワークフロー、所有コストの高さ、非効率的なプロセス、コンプライアンス違反があります。
2. ソリューションの模索
市場には似た機能を持つHCMソリューションが数多くありますが、その中で抜きん出ているのはスケーラブルなテクノロジー、実用的なデータ、パーソナライズされた従業員エクスペリエンス、グローバルな機能を提供するソリューションです。
3. 要件の確立
ビジネスが異なれば、ニーズも異なります。しかし、ほとんどのビジネスに求められるのは収益性の向上、戦略的成長の推進、優秀な人材の誘致と定着、セキュリティやコンプライアンスのトラブル防止、ITリソースの負担軽減に役立つシステムです。
4. 選択内容の確認
各業者の能力をHCM要件リストに照らして評価し、重要な関係者から情報を集め、円滑な移行プロセスを実現しましょう。
HRMとHCMに関するよくある質問
HRMとHRISの違いは?
HRISとHRMの主な違いは、人材サービスです。HRISは通常、人事機能のコアとなるスタッフ管理、給与計算、福利厚生、勤怠管理、応募者管理のうち1つ~5つを含みます。これらの機能を人材管理、人事考課、後継者育成計画と組み合わせたものが、一般的にHRMと呼ばれています。
HRMシステムとは?
HRMシステムとは、ワークフローを合理化し、管理業務負担を軽減するソフトウェアで、法規制の遵守に必要な労力を抑える際にも役立ちます。このシステムを使用すると、人事を組織内でより戦略的なポジションに押し上げ、生産性や決算結果を改善できる可能性があります。
HCMプラットフォームとは?
HCMプラットフォームは、成長の促進、労働力トレンドへの積極的対応に役立つよう設計された複数の機能の集合体です。完全に統合されたソリューションは基本的な管理機能を提供するだけでなく、最新のテクノロジーや分析を活用してデータの処理、レポートの作成、円滑なエンドユーザーエクスペリエンスの生成を行います。
HCMの市場規模は?
金融の専門家たちは、2020年は176億ドルだったHCMの市場が2025年には243億ドルにまで成長すると予想しています1。このトレンドの要因には、AIや機械学習などの新しいテクノロジーに加え、リモートと現場で働く従業員をクラウドベースのソリューションで管理する小中規模のビジネスの増加などがあります。
HCMデータとは?
HCMデータは、組織とその従業員1人1人のやり取りの記録です。特に優れたソリューションは社内の比較にとどまらず、時間外勤務、離職率、報酬、給与公平性といった重要な領域における業界や地域の同業者に対するベンチマークを提示します。両方のタイプのデータは、従業員スケジュール、福利厚生パッケージなどの決定をより適切に行うために活用できます。
この記事はテーマに関する実務的な情報を提示しており、ADPが法律や税金に関する助言などの専門的なサービスを提供するものではないという認識のもとで公開されています。