ADP Research Instituteの「2024年版 働く人びと:世界の労働力の状況」:激変期のさなかで働き手の期待が再び変化

2024年 6月 03日

仕事の世界が新時代に突入するなか、世界の35,000人近い働き手が給与、スキル開発、AIについての期待を明らかにします。 

ROSELAND, N.J., 2024年6月3日 /PRNewswire/ -- パンデミックを経た時代の働き方は、技術の進歩、経済的要因、人口動態の変化によって形作られつつあります。18か国の35,000人近い働き手に対する調査をもとにした、ADP Research Instituteの4回目となる「2024年版 働く人びと:世界の労働力の状況」は、働き手の期待がどのように変化しているかを捉えたものです。 

大規模な変化

今年は、パンデミックに左右され、困難を極めた経済から、パンデミック後の新たな世界へと移行する重要な時期となるでしょう。仕事のやり方が刷新されるなか、パンデミックの影響はまだ残っていますが、技術の進歩、人口動態の変化、新しい職場の規範などにより、大規模な変化が起きようとしています。

世界規模のインフレは働き手の給与に対する期待をリセットし、人口動態の変化は5つの世代を職場に集結させ、人工知能の先駆的なイノベーションは不確実性を生み出しました。

変わりゆく労働市場に対応しようとしている雇用主は、従業員の感情に注視していくことが必要となるでしょう。明確なコミュニケーションを心がけ、働き手の期待事項に対応し、信頼を育み、スキルの開発に投資する会社が今後、先手を取ることができるのです。

「パンデミックは仕事の世界に永続的な痕跡を残し、長年の慣習に大小さまざまな変化を強いることとなりました。人口動態の変化と新しい技術がリアルタイムで働き方を変化させている今、新たな課題が押し寄せています。」とADPのチーフエコノミストのNela Richardson氏は語ります。「世界の雇用が安定した一方、この急速に変化する環境のなかで働き手の感情は変わり続けています。」

2024 年版 働く人びと:世界の労働力の状況

今年のレポートで注目すべき点:

 生活費の高騰が賃金期待に影響を及ぼす:高インフレ時代における問題の1つは、生活費の高騰が人びとの将来の物価高への考えや賃金期待にどう影響するかです。 

世界各地で急激に高まったインフレを経て、生活費の高騰は働き手の賃金期待をリセットしました。データによれば、インフレ率が高い国の働き手は、給与の増加に対する期待が大きくなっています。しかし、過去の調査をもとに考えると、人びとは失望しているかもしれません。どの国の回答者も昨年の給与の増額を高く見積もりすぎていたからです。

「世界的なインフレはこの3年間でかなり減少しましたが、人びとは賃金期待において、この減少を反映してまだ完全に調整できていません。」とRichardson氏はコメントしました。「そのため働き手のなかには、現在の経済やビジネスの基礎的条件に見合う以上に高い給与を期待する人もいるかもしれません。」

  • 世界的な賃金期待において、最大のミスマッチが生じたのは中南米です。ブラジルでは、働き手の賃金期待と賃金増額の間に6%のギャップがあり、チリでは5%のギャップがありました。
  • 働き手の77%は今後12か月間での賃金増額を期待しており、20%は変化なしと予想、3%は賃金カットを予想しています。
  • 雇用主は働き手の(時には高すぎる)期待の変化に対応しなければなりません。レポートのなかでは、雇用主が透明性のあるコミュニケーションを行い、給与、働き方の柔軟性、キャリアアップ、トレーニングの機会など働き手が最も重視する問題に対する企業の取り組みとその影響について十分に説明することを提言しています。

数世代にわたる労働力:世界では高い年齢層の働き手が退職しつつあり、間もなく新しい世代に置き換わるでしょう。1980年代の後期から1990年代の初期に生まれた世代が管理職になりつつあり、世紀の変わり目に生まれた人びとが労働市場に参入しています。労働力の年齢層が広がるなか、雇用主は働き手の優先事項の変化に対応しなければなりません。企業としてバランスよく数世代をサポートする取り組みは、ポジティブな労働環境を醸成する鍵となるはずです。

  • 25~34歳の成人が仕事に慣れ、キャリアアップを始めるにつれて、日々の仕事の楽しみを最優先事項にする傾向は他のどのグループよりも低くなっています(26%)。
  • 55歳以上の働き手は若い世代と比べて、時間に対する自律性を優先させています。55歳以上の働き手の31%が労働時間の柔軟性を最優先事項の1つに挙げているのに対し、18~24歳の働き手では24%です。
  • 全世界の職場で見られた最大の変化の1つは、柔軟な勤務体制が幅広く採用されたことでしょう。こうした変化を受け、18~24歳の成人の17%は働く場所を選ぶ自由を重視しているのに対し、55歳以上の働き手では13%です。
  • 働き手の年齢が上がるにつれて、給与をより重視するようになります。45~54歳の働き手のほとんどにおいて、最優先事項に挙がっているのが給与です(62%)。25~34歳の働き手で給与を最優先事項としているのは56%で、18~24歳の働き手では44%にとどまります。

AIと仕事のスキルとの関係:働き手は将来必要となるスキルを注視しており、スキルに関する自信はAIとの関係と結びついています。AIの導入を考えている雇用主にとっては、従業員からの信頼を構築し、スキルの育成に投資することが肝要になるでしょう。AIのトレーニングを行い、AI機能をワークフローに組み込んで従業員の効率性を高めることは、戦略上の最優先事項となるはずです。

  • 調査対象となった働き手の約半数は、現在の仕事では必ずしも必要でない技術的能力が将来のスキルセットに含まれることを認めています。
  • AIが役立つと期待している働き手のうち70%が、自分には今後3年間で進歩していくために必要なスキルがあるという自信を持っています。AIを最も恐れている働き手は、自分が求められるスキルを持っているという自信が最も欠けています(45%)。
  • 多数の働き手(53%)が、雇用主による自身のスキル開発への投資を信頼していません。
  • AIに対する思い入れが強い働き手の場合、雇用主が必要なスキルのトレーニングに投資していると回答している人が半数以上います。しかし、雇用主の自分たちへの投資意欲や能力に懐疑的になるにつれて、AIが自身の仕事に影響をおよぼすという懸念が強まります。

ストレスは低下傾向に:ストレスはメンタルヘルス、仕事の実績、従業員の満足度に影響を与えます。パンデミックが収束し、日常的にストレスを抱えている従業員の割合は低下し続けていますが、雇用主は引き続き従業員の職場でのストレス軽減を優先事項とするべきです。

  • 毎日ストレスを感じていると回答する働き手の割合は、2021年の19%から、2022年は16%、2023年は15%に低下しました。
  • ある程度のストレスを感じる、またはストレスを感じることが週に何度かあると述べている従業員は32%で、2022年の34%よりも減少しています。ストレスが少ないか、ストレスを感じることが週に1度以下であると述べている従業員は52%で、2022年の50%よりも増加しました。
  • ストレスと無縁の国はありませんが、北米では働き手の多数(5人に1人)が勤務中のストレスの度合いが高く、特に米国でこの傾向が顕著になっています。
  • 精神面での健全性に対する雇用主のサポートが十分であると感じている従業員は、わずか21%です。
  • 全世界で、マネージャーや同僚からサポートされていると感じている従業員は、ストレスが高いと分類される傾向が低くなっています。ストレスが低いグループは、チームビルディング活動に参加したり、休暇を取ったり、マネージャーと定期的な話し合いをしている傾向が高くなっています。

「こうした継続的な仕事の変化は、課題でもあり、チャンスでもあります。会社は従業員がどのように適応し、どのように感じているかを注視しなければなりません。」とRichardson氏は述べました。「会社が常に働き手の感情に注意を払っていれば、変化を成長するチャンスにすることができます。」

グローバルな働き手の視点におけるその他の調査結果やコンテキストについては、ADP Research Instituteの「2024年版 働く人びと:世界の労働力の状況」や、ADPRI.orgに掲載している地域ごとの詳細をご覧ください(英語)。

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